福岡市やその近郊で、古くなったご実家や空き家の解体工事を検討される際、その費用は決して安くありません。
「少しでも費用を抑えたい」「解体工事に使える補助金や助成金はないだろうか?」と考えるのは、当然のことです。
インターネットで検索すると、様々な自治体の補助金情報が出てきますが、いざ「福岡市」で探してみると、「自分のケースで使える補助金が見つからない…」と困惑される方も少なくありません。
それもそのはずで、実は福岡市においては、「老朽化した空き家だから」という理由だけで幅広く使える解体工事の補助金・助成金制度は、現状(2025年11月時点)では限定的なのです。
しかし、だからといって諦めるのは早計です。特定の条件(例えば、建物の建っている場所や、危険なブロック塀の有無など)に合致すれば、福岡市でも利用できる補助金・助成金制度は存在します。
この記事では、福岡で解体工事を検討し、補助金や助成金について知りたいとお考えの皆様に向けて、福岡市で利用できる可能性のある制度、申請の注意点、そしてもし補助金が使えなかった場合に費用を抑える方法について、詳しく解説していきます。
福岡で解体工事の補助金・助成金を探す前に知っておきたいこと

まずは、福岡における補助金・助成金の基本的な考え方と、最も重要な注意点について押さえておきましょう。
なぜ「老朽化」だけでは福岡市で補助金が出にくいのか?
解体工事の補助金・助成金は、各自治体(市区町村)がそれぞれの地域課題(例:景観の改善、倒壊の危険性、空き家対策)に応じて独自に予算を組んで実施しています。
福岡市の場合、人口が流入し続けている都市部である特性上、空き家対策においても「危険だから解体する」という方向性だけでなく、「リノベーションして活用する」という側面も重視されています。
そのため、「単に古いから」という理由での解体工事よりも、土砂災害の危険がある区域や、地震で倒壊の恐れがあるブロック塀の撤去など、「差し迫った危険を除去する」ための解体工事に対する補助金・助成金が中心となっている傾向があります。
補助金・助成金は「福岡市」と「福岡県」どちらで探すべき?
解体工事に関する補助金・助成金の窓口は、その建物が所在する「市区町村」が基本となります。
福岡市内に建物を所有されている場合は、まずは「福岡市」またはお住まいの「区役所」の担当部署(建築指導課、まちづくり推進課など)に確認するのが第一歩です。
福岡県が主体となる制度もありますが、多くは市町村を通じて申請するか、特定の広域的な事業(例:アスベスト対策)に関連するものです。まずは身近な福岡市(区役所)の情報を確認しましょう。
【最重要】解体工事の「契約後」では申請できません
これは、ほぼすべての補助金・助成金に共通する最大の注意点です。
補助金・助成金は、必ず「解体工事業者との契約前」および「工事の着手前」に申請し、自治体から「交付決定通知」を受け取る必要があります。
「先に工事を始めてしまった」「すでに契約してしまった」という場合、後から申請しても補助金・助成金を受け取ることはできません。
「知らなかった」では済まされないため、必ず解体工事の計画段階で、補助金の有無を調査・相談するようにしてください。
【福岡市】解体工事で利用できる可能性のある補助金・助成金制度

福岡市において、解体工事に関連する可能性のある主な補助金・助成金制度を具体的にご紹介します(※制度の名称や内容は変更される場合があります。必ず最新情報を福岡市の公式サイトや窓口でご確認ください)。
1. 【危険区域が対象】福岡市土砂災害等危険住宅移転事業補助金
これは、福岡市内の「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」や「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」、あるいは「がけ条例」が適用される区域内にある危険な住宅(空き家含む)を対象とした制度です。
これらの危険な住宅を安全な場所に移転(新築・購入)する場合、または危険な住宅を除却(解体)する場合に、その費用の一部が補助されます。
解体工事(除却)のみを行う場合でも、一定の上限額(例:数十万円程度)まで補助の対象となる可能性があります。ご所有の物件がこれらの区域に該当するかどうか、福岡市のハザードマップ等で確認し、対象であれば担当部署に相談する価値が非常に高い制度です。
2. 【ブロック塀の撤去】福岡市ブロック塀等除却費補助事業
これは、家屋本体の解体工事ではなく、それに付随する「危険なブロック塀」の撤去(除却)に対する補助金・助成金です。
地震の際に倒壊する恐れがあり、かつ公道(道路)に面しているなど、一定の基準(高さ、古さ)を満たさないコンクリートブロック塀などが対象となります。
家屋の解体工事と同時に、古いブロック塀も一緒に撤去する場合、この塀の撤去費用部分については補助金・助成金の対象となる可能性があります。上限額は除却費用の数分のいくら(例:2/3や1/2)で、かつ上限額(例:十数万円)が定められていることが一般的です。
3. 【アスベスト除去】アスベスト(石綿)除去に関する国の支援制度
古い建物(特に昭和50年代以前)の解体工事では、アスベスト(石綿)が使用されている可能性があります。アスベストの除去作業は専門的な管理が必要で、解体工事費用とは別に高額な除去費用が発生することがあります。
このアスベストの分析調査や、一定レベル以上のアスベスト除去作業(飛散性の高いレベル1, 2など)に対しては、国(国土交通省)の補助制度(地方公共団体経由)が利用できる場合があります。
これは福岡市が窓口となり、国の予算に基づいて実施されるため、解体工事の見積もり段階でアスベストの存在が疑われた場合は、解体工事業者や福岡市の担当部署に相談してみましょう。
4. 【福岡市以外の近隣自治体】(参考)福岡県内の他市町村の動向
この記事の読者は福岡市内の方が多いと想定されますが、もし福岡市「以外」(例:北九州市、久留米市、飯塚市、筑紫野市など)に物件をお持ちの場合は、状況が異なります。
自治体によっては、福岡市では実施していない「老朽危険空き家」そのものの解体工事に対する補助金・助成金制度(例:解体費用の1/2、上限50万円など)を独自に設けている場合があります。
必ず、その物件が所在する「市役所・町役場」のWEBサイトで、「(自治体名) 空き家 解体 補助金」といったキーワードで検索し、独自の制度がないかを確認してください。
福岡で解体工事の補助金・助成金を申請する際の一般的な流れと注意点

もし利用できる補助金・助成金が見つかった場合、その申請はどのような流れで進むのでしょうか。一般的な手順と注意点を解説します。
ステップ1:お住まいの自治体(福岡市・区役所)への事前相談
まずは、福岡市の担当部署(例:建築指導課、まちづくり推進課、区役所の維持管理課など)の窓口や電話で、「こういう物件の解体工事を考えているが、使える補助金・助成金制度はあるか?」と具体的に相談します。
この時、建物の住所、構造、築年数、現地の状況(ブロック塀の有無、がけ地の近さなど)を伝えられると、スムーズです。
ステップ2:補助金・助成金の申請と交付決定通知の受領
対象となる制度があれば、申請書類一式(申請書、見積書、現地の写真、図面など)を揃えて提出します。
この「見積書」は、補助金申請に対応できる解体工事業者に作成してもらう必要があります。
自治体側で書類が審査され、問題がなければ「交付決定通知書」が送付されます。この通知書を受け取るまでは、絶対に工事の契約や着工をしてはいけません。
ステップ3:解体工事業者との契約・工事の実施
「交付決定通知書」を受け取ったら、正式に解体工事業者と工事請負契約を結び、解体工事を開始します。
工事中は、補助金・助成金の要件(例:写真撮影、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の保管)に従って、適切に施工管理を行います。
ステップ4:実績報告書の提出と補助金の受領
解体工事が完了したら、自治体に対して「実績報告書」を提出します。これには、工事完了後の写真、業者への支払領収書のコピー、マニフェストのコピーなどが含まれます。
報告書が審査され、内容に不備がなければ補助金額が確定し、指定した口座に補助金・助成金が振り込まれます。
多くの場合、補助金は「後払い」となるため、一旦は解体工事費用全額を立て替えて支払う必要があります。
注意点:予算の上限と申請期限(先着順・抽選)
補助金・助成金には、必ずその年度の「予算」が設定されています。申請期間内であっても、予算の上限に達した時点で受付が終了となる(先着順)ケースが非常に多いです。
新年度(4月)から受付が開始されることが多いため、解体工事の計画は、前年度の秋から冬にかけて情報収集を始め、新年度の早い時期に申請できるよう準備するのが理想的です。
もし福岡市で解体工事の補助金・助成金が使えなかったら?費用を抑える方法

福岡市で探した結果、残念ながらご自身のケースで使える補助金・助成金が見つからなかった場合でも、解体工事の費用を抑える方法はあります。
複数の信頼できる解体工事業者から「相見積もり」を取る
最も確実かつ効果的な方法は、信頼できる複数の解体工事業者(できれば3社程度)から「相見積もり」を取ることです。
解体工事費用には定価がなく、業者によって見積金額は数十万円単位で変わることも珍しくありません。
単に金額が安いだけでなく、見積書の内容が詳細か(追加費用のリスクはないか)、アスベスト調査や廃棄物の適正処理(マニフェスト発行)をしっかり行う業者かを見極めることが重要です。
解体工事後の土地活用(売却・駐車場など)を見据えた計画を立てる
解体工事は「目的」ではなく「手段」です。解体後の更地をどうするのか(売却する、駐車場として活用する、新築する)をあらかじめ決めておきましょう。
例えば、売却を予定している場合、買主が希望する状態(例:地中埋設物の撤去状況)にしておく必要があります。解体業者にもその目的を伝えることで、最適な工事内容と費用を提案してもらえる可能性があります。
自分でできることは自分で行う(残置物の事前処分)
家屋内に残っている家具、家電、衣類などの「残置物」の処分を解体工事業者に一括で依頼すると、「産業廃棄物」扱いとなり、処分費用が割高になるケースがあります。
解体工事の前に、できる限り自分で処分(自治体の粗大ごみに出す、リサイクルショップに売る、親族で形見分けする)しておくことで、残置物処理費用を大幅に削減できる可能性があります。
まとめ:福岡での解体工事は、まず補助金・助成金の条件確認から
福岡市で解体工事の補助金・助成金をお探しの方に向けて、その現状と具体的な制度、注意点について解説しました。
改めて重要なポイントをまとめます。
- 福岡市では「老朽化」だけを理由とした解体補助金は限定的。
- 「土砂災害危険区域」や「危険なブロック塀」「アスベスト」など、特定の条件に合致すれば補助金・助成金を利用できる可能性がある。
- 補助金・助成金は必ず「契約前・着工前」に申請し、「交付決定」を受ける必要がある。
- 申請には「予算」と「期限」があり、先着順の場合が多いため、早めの情報収集が鍵となる。
- もし補助金が使えなくても、「相見積もり」や「残置物の事前処分」で費用を抑えることは可能。
解体工事は高額な費用がかかりますが、国の制度や福岡市の補助金・助成金を正しく理解し、活用できるものがないかを確認することは非常に重要です。
まずはご自身の物件が何らかの条件に合致しないかを確認し、同時に信頼できる解体工事業者に相談することから始めてみてください。


